浣腸の行い方に関する紹介

浣腸の準備:
浣腸液は体温よりやや高め(38〜40℃程度)に温めておく。冷たすぎると腸が萎縮し十分な効果が得られないばかりか、体調を崩す原因となる。また熱すぎるとやけどを起こすため、十分注意する。 ディスポーザブル浣腸を用いる場合は、容器ごとやや熱めのお湯にしばらくつけておくとよい。熱湯を用いると温度調節が難しく、場合によっては容器が変形してしまい注入が困難になることもあるので注意する。被施術者は事前に排尿をすませておく。 浣腸を行うことによって膀胱に圧力がかかり尿意を強く感じ、浣腸の効果が高まるまで我慢できなくなる可能性があるからである。

浣腸の体位 :
左側臥位(左側を下にして横に寝た体位)にして膝を軽く抱える体位を取らせる。小さな子供の場合おしめを変えるときの様な体位でもよい。左側臥位が好ましいのは、腹部に余分な力が入らず、重力を借りて浣腸液が腸内(腸は直腸の先S字結腸が左に曲がり左脇腹に下降結腸が通る形をしている)に浸透しやすく、また、留まりやすい(効果が十分に現れる前に便意が強くならず我慢しやすい)からである。また、浣腸を施す側にとっても、肛門付近が見やすく適切な措置が出来る体位である。

和式便器にしゃがんだような体位や、立った状態でおしりを突き出すような体位は上記理由に反するためあまり好ましくない。また、体位によっては適切な挿入角度がとれなかったり、挿入中の患者の身じろぎなどによって直腸の形状が変化し、腸を傷つける可能性があるため、十分注意する。

浣腸後トイレまでの移動に患者が不安を訴え、トイレの個室内で浣腸を行った結果、浣腸器で患者の腸を傷つけてしまった医療事故例がある。このような場所での施術は狭く適切な体位がとれず、また暗く十分な確認ができないまま浣腸をすることになり危険である。

浣腸器の挿入:
軽く口を開けさせ肛門より浣腸器を挿入する。軽く口を開けさせるのは腹部や肛門に余計な力を入れさせないためである。ディスポーザブル浣腸の場合、挿入前には挿入管にバリなどが無いかしっかりとチェックしておく。挿入管がスムーズに挿入できるよう、浣腸液を少量出してぬらしておくか、潤滑剤を塗るようにしておく。

また、急に挿入しようとすると反射的に肛門に力がかかって挿入しづらくなり、患者は痛みを感じ、場合によっては肛門を傷つけてしまう可能性があるため、患者には今から挿入する旨を伝え、ゆっくりと挿入する。 事前に肛門をマッサージして刺激になれさせ、またワセリンなどを塗った指を軽く挿入しておくとスムーズに行える。

挿入する深さは5cm〜8cm程度がよい、挿入中に抵抗を感じたら少し引き抜きもう一度挿入するようにして必要以上の圧力をかけないようにする。 あまり深く挿入すると腸を傷つける可能性がある。また浅いと肛門近くに浣腸液が注入され、直腸に圧力が加わることによって強い便意が起こり、十分な効果が現れる前に排泄してしまう可能性がある。

浣腸液の注入 :
ゆっくりと浣腸液を注入する。早くすませようと強い圧力をかけると腸を損傷する可能性がある。高圧浣腸の場合、50cm〜60cm程度の高さが適切な圧力であるとされる。 ディスポーザブル浣腸を用いる場合は気泡が容器内に残るような角度で圧をかけるとよい。

我慢させる :
注入後そのままの体位で十分に便意が強まるまでしばらく我慢させる。柔らかい紙等を肛門に押し当て我慢しやすいようにしてあげるとよい。また、我慢させている間、より効果を得るために大腸の流れに沿って「の」の字に腹部をマッサージするのもよい。 我慢するために足を伸ばし臀部を締め付けるようにする人もいるがこれは我慢に適さない、かえって便意が増強され即失禁してしまうこともある。目安としてはグリセリン浣腸の場合3〜5分程度。ある程度の時間浣腸液をとどめておかないと、十分に効果が得られず浣腸液だけが排泄される場合がある。この場合、浣腸液が残留し渋り腹を起こす事がある。

注入直後は注入そのものによる刺激により一時的に強い便意を感じる事があるが、これは我慢させる。また、いつ排便が起きてもいいようにと便器に座って我慢させるのは好ましくない。便器に座ったりしゃがみ込んだ体位は、重力と腹筋の力によって排泄しやすい体位であることから我慢に向かないことはもとより、習慣的に排泄する体位であることから便意が強まらなくとも排泄してしまったり、排泄してもよい状態である認識から我慢が効かないことが多い。以上から問題がなければ、トイレのすぐ近くの横になれる場所で我慢させ、十分に便意が強まってからトイレに入らせるのがよい。便意の感じ方は人によってまちまちであるが、できる限り長く我慢した方がよい。しかし、必要以上に我慢させると渋り腹になったり、脱水症状などになる可能性がある。また、失禁させてしまうと禁忌、羞恥により患者を精神的に深く傷つけるため、原則にこだわらず患者の体力、体調を見極め我慢させる時間を適切に調節するようにする。

排泄させる:
十分便意が高まるまで我慢させたら排泄させる。施術場所からトイレまで患者自身で移動するに当たり、我慢していた体制から立ち上がり歩く体制になると急激に直腸内の圧力が肛門にかかり我慢が効かなくなるので、施術場所からはあまり移動できないものと考えて施術する。できれば施術場所から見えるところにトイレがあると患者も安心できる。また、十分に便意が高まっているため、排泄時勢いよく息んでしまいがちであるが、肛門に傷を付けないよう極力息む力を弱めるよう努力した方がよい。

排泄はもっともプライベートな行為であり、禁忌.羞恥の対象であるため、たとえ医療行為であっても極力患者のプライバシーに配慮する必要がある。排泄物の確認や排泄後の肛門の状態の確認等が必要であっても排泄中を周囲の目(施術者を含む)にさらさないように配慮する。音や臭いも極力患者以外に届かせない(届いていると患者に思わせない)配慮を行う。ベッドから動かさず、差し込み便器等に排泄させる場合でも、患者の下半身をシーツで覆う、カーテンを閉める等を行い、換気のため窓を開け、排泄中は施術者も特段の必要がない限り退出するようにする。

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